FTSSIが提案する
「トレーサビリティ・システムの相互運用について」

2.トレーサビリティの普及のために

(2)トレーサビリティ普及のために企業が取り組む動機

 フードチェーンのステークホルダーが民間企業である限り、その目的の第一は利益追求である。トレーサビリティを実現することによる費用がその利益を圧迫するのであれば、積極的な導入は期待できない。当然のことであるが、トレーサビリティを構築することによる費用―システム構築費用、そのランニング費用(人件費を含む諸々の諸経費)―が、結果としてそれ以上の利益を生み出すことになれば、あるいは事故等の発生を予防する効率的なリスクマネージメントが可能になるということを示すことができれば、多くの企業が導入について積極的に取り組むことは確かである。

 しかし、エクスターナル・トレーサビリティの導入が利益を生み出すことは誰も保証できない。確かに消費者の食品の安心・安全に関する声は高まっているが、実際にトレーサビリティシステムの導入により、恒常的(短期間では存在するが)に利益を生み出している企業は見当たらなかった。トレービリティが、消費者に対して企業の信頼を高めることに役立ち、それによって収益の増大が実現可能となる、というようなシナリオがなければ、トレーサビリティの定着は見込めないと言える。

 また、リスクマネージメントによる事故防止という観点からは、今までの食品事故の損害例からも、実際に事故が発生した場合の損害の大きさは容易に推測することが出来、システム導入・ランニング費用とのトレードオフで、費用対効果を得ることができれば導入の可能性があろう。加工食品業界において既に確立されているインターナル・トレーサビリティの目的も、事故防止による自己防衛と大量の製品を取り扱うための最大のコストである人件費の抑制であり、そのためにITシステムが導入されていると考えることができる。

図4.トレーサビリティにおけるインセンティブ





食品トレーサビリティシステム標準化推進協議会

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