FTSSIが提案する
「トレーサビリティ・システムの相互運用について」

2.トレーサビリティの普及のために

 「各企業の食の安心・安全に対する意識が、企業間の競争の原理を超えた公益性の確保という見地に立つという意識改革が必要」という主張は、理想論として、あるいは総論としては認知されやすいものかもしれない。しかしながら、現実的には、企業の存在原理等により、一足飛びに理想に到達することは困難である。

(1)まずはインターナル・トレーサビリティの早期実現

 これまで我が国では、ある特定品目や業界毎のチェーントレーサビリティの早期実現を目指した取り組みが多く、国産牛肉のように法的強制力があって実現した例もあるが、実証試験的な試みで終わった例が多いのが実態である。
 サプライチェーン全体で、一定のトレーサビリティ標準を導入し、チェーントレーサビリティを実現することは、信頼性や精度の高いトレーサビリティを実現する上で有用な取り組みである。しかし、チェーントレーサビリティを実現する前提として、各事業者が事業者内でインターナル・トレーサビリティを実現することが前提条件とならざるを得ない。
 これらをほぼ同時に実現することは、不可能ではないが非常に難しいと考えられる。現実的、実際的な取り組み段階を考慮した場合、インターナル・トレーサビリティを実現した後に、一気にチェーントレーサビリティの実現を目指すより、まずは、流通の前後の事業者間でエクスターナル・トレーサビリティの実現を目指すことの方が、より実現性が高いものと考えられる。また、サプライチェーン全体で、同時にエクスターナル・トレーサビリティを導入しようとする取り組みは、結果的にはチェーントレーサビリティを実現しようとする取り組みに極めて近いものとなる。
 いずれにせよチェーントレーサビリティを実現することが究極の目的であることには間違いない。そのための取り組みとして、例えば3年以内等の期限を設定し、業界やサプライチェーン全体で、まず最初にインターナル・トレーサビリティを導入し、次いでエクスターナル・トレーサビリティの実現を目指す取り組みを実施することが、トレーサビリティの早期普及を図る上で有効と考えられる。
図3.インターナル・トレーサビリティとエクスターナル・トレーサビリティ




食品トレーサビリティシステム標準化推進協議会

Copyright © 2003-2009 FTSSI All Rights Reserved.